被告は、第4類「固形潤滑剤、靴油、保革油、燃料、工業用油、工業用油脂」を指定商品として「SUBARIST」の欧文字と「スバリスト」の片仮名を上下二段に横書きしてなる商標について登録を受けました。
これに対して自動車ブランド「SUBARU」の商標権者である富士重工業株式会社が無効審判を請求しましたが、請求棄却審決を受けたため、審決取消訴訟を提起したという事件です。
原告側は、取消事由として商標法4条1項11号、同項15号、同項19号、同項7号をあげましたが、知財高裁は取消事由の内、同項15号についてのみ以下のように判断しました。
原告の引用商標1~3と本件商標の類否については、「本件商標と引用商標1とは、『SUBAR』という文字を構成の一部に有している点で、また、本件商標と引用商標2及び3とは、『スバ』という文字を構成の一部に有している点で、それぞれ共通しているものの、その外観は全体として類似するものということはできない。また、本件商標の称呼と引用商標1ないし3の称呼とは、語頭の『スバ』が共通するものの、本件商標は、『スバ』の後に『リスト』が続き、全5音で構成されているのに対し、引用商標1ないし3は、『スバ』の後に『ル』が続く全3音で構成されていることからすると、『ル』と『リ』は50音中同じ行に属することなど原告が主張する事情を考慮しても、その称呼は全体として相違するものといわなければならない。他方、本件商標からは、原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家との観念が生じることがあり、引用商標1ないし3からも、原告が製造する自動車のブランドであるスバルとの観念が生じ得るから、観念の点では、関連性があることは否定できないが、これらの観念も全く同一のものではなく、上記のとおり、外観や称呼の点で相違するものであることに照らすと、本件商標と引用商標1ないし3とが全体として類似する商標であるとまでいうことはできない。」として本件商標と引用商標1~3は非類似であると判断しました。
本件商標と引用商標4の類否については「本件商標と引用商標4とは、文字の書体に若干の相違があるほかは、『SUBARIST』及び『スバリスト』を構成する各文字や、これらを上下二段で横書きするという全体の構成も共通している。したがって、本件構成と引用商標4とは、後記(4)のとおり指定商品を異にするものの、外観及び称呼において類似する商標であるといわなければならない。」として類似すると判断しました。
原告商標の周知著名性については、「原告は、自動車の車両・部品・関連資材の製造販売、航空機の製造販売等を目的とする株式会社であり、...平成20年から平成22年まで、日本国内における自動車の年間販売シェアで4%前後を維持している著名な企業である」等として原告の引用商標1「SUBARU、引用商標2及び3「スバル」について周知著名性があることを認めました。
しかしながら原告引用商標4「SUBARIST/スバリスト」については、「その指定商品である紙類等について使用されていることを認めるに足りる証拠はなく、これが周知著名性を有するものであると認めることはできない。」として周知著名性を否定しました。
混同を生ずるおそれについては、「本件商標は、外観や称呼において引用商標1ないし3と相違し、これらが全体として類似する商標であるといえないとしても、本件商標からは、原告が製造する自動車のブランドであるスバルの自動車の愛好家との観念が生じることがあり、他方、引用商標1ないし3からも、原告が製造する自動車のブランドであるスバルとの観念が生じ得るから、観念において関連性があることは否定できない。...自動車の分野において、引用商標1ないし3が周知著名性を有していることは当事者間に争いがないことや、本件商標の指定商品は、引用商標1ないし3が使用される商品と同一又は関連性を有することなどを併せ考慮すると、本件商標をその指定商品に使用した場合、その需要者及び取引者において、本件商標が使用された商品が、例えば、原告から本件商標についての使用許諾を受けた者など、原告又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所につきいわゆる広義の混同を生ずるおそれがあることは否定できない。したがって、本件商標が、商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断は、同号の適用を誤るものであり、本件審決は、取消しを免れない。」として4条1項15号該当性を認め、審決を取消しました。