氷山印事件(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決)

本事件は、商標の類否判断基準について示された最高裁判決です。
X(原告・被上告人)は、指定商品を「硝子繊維糸」として、黒色の円形輪郭内の上半分に淡青色の空、下半分に濃青色の海面、中央部に海面に浮き出た氷山の図形を描き、円形輪郭内の上部周縁に「硝子繊維」、氷山の図形の下に「氷山印」円形輪郭内の下部周縁に「日東紡績」の文字を記載した商標(以下「本願商標」)の登録出願をした。Y(特許庁-被告・上告人)は、本願商標は指定商品を「糸」とする登録商標「しょうざん」(以下「引用商標」)と称呼が近似するとして、その出願を拒絶しました。Xは審決取消訴訟を提起しました。
審決取消訴訟において両商標は称呼非類似であるとして、審決は取消されました。これに対してYが上告したという事件です。
最高裁の判断の要旨は以下の通りです。

要旨1:「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」

要旨2:「商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従つて、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によつて、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。」

要旨1では、商標の類否判断は類似商品に使用された場合に出所混同のおそれがあるかで判断すべきであること、商標の外観、称呼、観念の異同だけでなく商品の取引実情を考慮して行うべきであることを述べています。
要旨2では、商標の外観、称呼、観念の類似は商品の出所混同のおそれを推測させる一応の基準に過ぎないことを述べています。

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