原告は、第5類「サプリメント」を指定商品とする商標「ノンマルチビタミン」(標準文字)について商標登録出願を行いましたが、本件商標は「複数のビタミンを含まない商品」であることを表示するものにすぎないとして商標法3条1項3号及び4条1項16号を理由として拒絶査定を受けました。 原告はこれを不服として、拒絶査定不服審判を請求しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けたので、本件審決取消訴訟を提起しました。 本件審決取消訴訟の争点は、【1】商標法3条1項3号該当性の判断の誤り、【2】商標法4条1項16号該当性の判断の誤りの2点です。 知財高裁は【1】、【2】について以下のような判断を示しました。
【1】商標法3条1項3号該当性の判断の誤りについて知財高裁は、「本願商標は、『ノンマルチビタミン』の片仮名文字を標準文字で横書きに書してなる商標であり、各構成文字が同じ大きさ、等間隔で表されており、外観上一体のものとして把握されるから、本願商標からは『ノンマルチビタミン』の一連の称呼が生じる。...本願商標を構成する「ノン」の語に関し、...接頭語として、『非、無、不、などの意味を表す。』...『マルチ』の語に関し、...『(接頭語として)【多数の】【複数の】【多面的】の意を表す。』...本願商標を構成する『ビタミン』の語に関し...『栄養素の1。動物体が正常な生理作用を営むために必要な微量の有機化合物。体内合成が不可能な物質で、A、B、C、D、E、H、K、L、Pなどのほか、B群にはニコチン酸、パントテン酸、葉酸、コリンがある。』...との記載がある。本願商標は、その指定商品のうち『複数のビタミンを含まないサプリメント』、すなわち、『1種類のビタミンを成分とするサプリメント』又は『1種類のビタミン及びビタミン以外の成分からなるサプリメント』に使用されたときは、『複数のビタミンを含まないサプリメント』という商品の内容(品質)を表示するものとして、取引者、需要者によって一般に認識されるものであって、取引に際し必要適切な表示であるものと認められるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品識別力を欠くものというべきである。加えて、本願商標は、標準文字で構成されているから、『ノンマルチビタミン』の文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるといえる。したがって、本願商標は、その指定商品のうち『複数のビタミンを含まないサプリメント』に使用されたときは、商標法3条1項3号に該当するものと認められる。」として3条1項3号に該当するとしました。
【2】商標法4条1項16号該当性の判断の誤りについて知財高裁は、「本願商標をその指定商品中、『複数のビタミンを含まないサプリメント』に使用した場合、これに接する取引者、需要者によって『複数のビタミンを含まない商品』という商品の品質を表示したものと認識されるから、本願商標を上記商品以外の指定商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認められる。」として4条1項16号に該当するとの判断に誤りはないとし、原告の請求を棄却しました。