オルガノサイエンス事件 知財高裁平成27年8月6日判決

被告は、第1類「芳香族有機化合物、脂肪族有機化合物、有機ハロゲン化物、アルコール類、フェノール類、エーテル類、アルデヒド類及びケトン類、有機酸及びその塩類、エステル類、窒素化合物、異節環状化合物、有機リン化合物、有機金属化合物、化学剤、原料プラスチック、有機半導体化合物、導電性有機化合物」、第40類「有機化合物・化学品・原料プラスチックの合成及び加工処理」を指定商品・指定役務とする第5325691号「オルガノサイエンス(標準文字)」(以下「本件商標」とする。)の商標権者です。原告は、指定商品を第1類「界面活性剤、化学剤」とする第1490119号「オルガノ」(以下「引用商標」とする。)の商標権者です。
原告は、被告の商標は商標法4条1項11号及び15号に該当するとして無効審判を請求(無効2014-890019号)しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受ました。原告は、これを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
知財高裁は、「原告は、昭和21年に株式会社日本オルガノ商会として設立され、同41年に現商号である『オルガノ株式会社』に商号変更した。原告は、純水製造装置、超純水製造装置、排水処理装置、発電所向けの復水脱塩装置、官公需向けの上下水設備等の製造、納入、メンテナンスといった水処理装置事業と、水処理薬品、イオン交換樹脂、食品添加物等の製造、販売といった薬品事業を主に行っており(甲7、8)、本件商標の登録出願時(平成20年)には資本金が約82億円に達し該期の売上高は735億9200万円(そのうち、水処理装置事業が581億7200万円、薬品事業が154億2000万円)に及ぶ(甲10)。特に、超純水製造装置は、水処理事業の主力商品であり、市場シェアの3割以上を占める(甲15)。...以上より、引用商標及び使用商標は、本件商標登録出願時には、原告及び原告の事業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知となっており、原告の事業は水処理関連事業であるが、これには薬品事業が伴うものと認識されていたものと認められる。」として、原告の引用商標ないし使用商標は、原告の薬品事業を含む原告の事業ないし商品・役務を示すものとして相当程度周知であったとしました。
その上で4条1項11号該当性について知財高裁は、「引用商標『オルガノ』は、本件商標登録出願当時、相当程度周知であったものと認められる。本件商標『オルガノサイエンス』は、『オルガノ』と『サイエンス』の結合商標と認められるところ、その全体は、9字9音とやや冗長であること、後半の『サイエンス』が科学を意味する言葉として一般に広く知られていること、前半の『オルガノ』は、『有機の』を意味する『organo』の読みを表記したものと解されるものの、本件商標登録出願時の広辞苑に掲載されていない(甲133)など、『サイエンス』に比べれば一般にその意味合いが十分浸透しているものとは考えられないことが認められ、さらに、上述のような引用商標の周知性からすれば、本件商標のうち『オルガノ』部分は、その指定商品及び指定役務の取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められ、他方、『サイエンス』は、一般に知られている『科学』を意味し、指定商品である化合物、薬剤類との関係で、出所識別標識としての称呼、観念が生じにくいと認められる(最(二)判平成20年9月8日、裁判集民事228号561頁参照。)。したがって、本件商標については、前半の『オルガノ』部分がその要部と解すべきである。本件商標の要部『オルガノ』と、引用商標とは、外観において類似し、称呼を共通にし、一般には十分浸透しているとはいえないものの、いずれも『有機の』という観念を有しているものと認められる。したがって、両者は、類似していると認められる。本件商標の指定商品と、引用商標の指定商品とは、いずれも『化学剤』を含んでいる点で共通している。」として原告主張の取消事由1には理由があるとして、審決を取消しました。

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