被告は、第25類「被服、履物」を指定商品とする登録第5170958号「RAGGAZZA」(標準文字)の商標権者です。原告は、本件商標について特許庁に対して無効審判を請求(無効2012-890063号事件)しましたが、審判請求は成り立たない旨の審決がなされました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
本件訴訟の争点について知財高裁は以下のように判断しました。
争点【1】(商標法第3条第1項第6号該当性についての判断の誤り)について知財高裁は、「本件商標『RAGGAZZA』は、特定の意味を有しない語であるから、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標に該当することはない。また、本件商標『RAGGAZZA』は、イタリア語『RAGAZZA』に近似した文字から構成されることから、本件商標から、『RAGAZZA』の文字を想起させることがあり得たとしても、本件証拠によれば、そもそも『RAGAZZA』の意味を認識、理解できる需要者は、多いとは認められない。さらに、仮に、本件商標から、イタリア語『RAGAZZA』の意味である『少女、(未婚の)若い女性、娘、女の子、恋人、彼女、子供』を想起する需要者がいたとしても、それらの意味と本件商標の指定商品との関係を考慮すると、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であると判断することもできない。」として、本件商標が商標法3条1項6号に該当するものではないとした特許庁の判断は妥当であるとしました。
争点【2】(商標法4項1項16号該当性についての判断の誤り及び商標法4条1項7号該当性についての判断の誤り)について知財高裁は、「本件商標は、特定の意味を有することはなく、近似するイタリア語『RAGAZZA』についても、需要者にその意味が認識、理解されていると認めるに足りる証拠はないから、本件商標に接した需要者は、本件商標が商品の品質を表すものとして、認識するとは認められない。本件商標はイタリア語『RAGAZZA』を想起させるものではないから、本件商標の独占を認めたとしても、無用な混乱を生じさせ、国際的な商品流通秩序を乱すとも認められない。」として本件商標が商標法4条1項16号にも、同7号にも該当するものでないとした審決の判断に誤りはないとしました。
争点【3】(商標法第3条第1項第柱書についての審理判断の逸脱)について知財高裁は、「無効審判請求の理由として商標法3条1項柱書を追加することは、請求の理由の要旨を変更するものであるから、商標法56条1項の準用する特許法131条の2第1項の規定により、これが当然に認められるものではない。また、これを裁量で審理しなかったことが、裁量権の逸脱であると認めるに足りる証拠は何らない。」として、原告の主張は採用できないとしました。