原告は、第24類「織物、布製身の回り品、かや、敷布、布団、布団カバー、布団側、まくらカバー、毛布、織物製いすカバー、織物製壁掛け、カーテン、テーブル掛け、どん帳、織物製テーブルナプキン、ふきん、シャワーカーテン、のぼり及び旗(紙製のものを除く。)、織物製トイレットシートカバー」他を指定商品とする第4862594号「SHIPS」(以下、「本件商標」とする)の商標権者です。被告は、「SHIPS」の文字列で構成される標章(以下、「被告標章」とする)を被告商品に付して販売しています。
原告は、被告の行為は原告の商標権を侵害するものであるとして本件訴訟を提起しました。本件訴訟の争点は、「被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か」です。
東京地裁は、「昭和50年に設立された原告は、昭和52年に『SHIPS』の名称の店舗をオープンさせ、その後、いわゆるセレクトショップとして、様々なブランドの商品を独自のコンセプトに基づいて直接買い付け、また、『SHIPS』のブランド名の自社商品を開発して、紳士服、婦人服のほか、ネクタイ、ハンカチ、靴下、バッグ、財布等の各種服飾品などの販売を行っていること、原告は、全国に、『SHIPS』又はこれを含む名称の店舗を、昭和60年当時9店、平成3年当時26店、本件訴え提起当時約58店を展開しており、平成25年2月期の原告の売上高が215億4400万円に上ること...これらの事実によれば、本件商標は、服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識されており、強い識別力を持つ商標であると認められる。...被告商品においては、30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ、証拠〈略〉によれば、被告標章は、そのデザインの中において、他の文字列から分離して表記されており、その『SHIPS』の文字列は、全て大文字で、かつ、『ANCHOR』の文字列とともに、他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり、さらに、他の文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して、この『SHIPS』及び『ANCHOR』はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる。そして、『ANCHOR』の文字列は、それが意味するところの「錨」のマークの上に配置され、同マークの下の『Anchors can either be temporary or permanent.』の英文を含めて、一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して、被告標章は、それが意味するところの『船』ではなく、『錨』のマークの下に配置され、同マークの上の『SINCE1981』の文字列を含めて、一つの固まりとして一体的に表示されている。このような被告商品における被告標章の配置、文字の大きさ及び表示態様からすれば、被告標章は、被告商品のデザインの中で、十分に独立して認識可能な標章として表示されているということができる。このことに加えて、被告標章が、一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる『SINCE』の表記を伴い、上記のとおり『SINCE1981』の文字列と一体的に表示されていること、及び、前記(1)のとおり、『SHIPS』の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると、被告商品において被告標章は、その需要者に対して、商品の自他を識別し、出所を表示する態様で用いられていると認めることができる。」として被告標章は、被告商品において、商標として使用されていると認めるのが相当であると判断しました。