天下米事件 知財高裁平成23年4月25日判決

原告は、指定商品を第30類「不透明の気密性袋に密封包装した福井県産の炊飯用精白米」とする商標「天下米」(以下、「本願商標」とする。)について商標登録出願を行いましたが、商標「天下」(以下、「引用商標」とする。)を引用されて商標法4条1項11号で拒絶査定を受けました。原告はこれを不服として拒絶査定不服審判を請求しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受けました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
本願商標と引用商標が類似するかについて知財高裁は、「本願商標は、...『天下米』との縦書きの筆書風の文字よりなるところ、『天下』・『米』という構成要素から『この上なくすばらしい米』といった観念が生じるとともに、『テンカマイ』との称呼を生じる。他方、引用商標は、...『天下』の横書きのゴシック体の文字よりなるところ、『天下』とは、『天のおおっている下』・『一国全体。全国』・『一国の政治。万機。また、その権力』・『天子の称』・『実権を握って思うままにふるまうこと』・『世間。世の中』・『世に類がない。この上ない』(広辞苑第6版、甲8)といった各種の観念が生じるものであり、また『テンカ』との称呼が生じるものである。以上によれば、本願商標と引用商標とは、まず、その外観上、いずれも図柄等のない文字のみで構成された商標であって、『天下』の部分で完全に一致しており、文字が縦書きか横書きか、筆書風かゴシック体か等の点で違いはあるものの、その外観の違いがさほど顕著であるともいえない。また、観念については、本願商標からは『この上なくすばらしい米』といった観念、引用商標からは『天下』ないしそれに準ずる観念(『世に類がない、この上ない』という観念を含む。)が生じるものである。称呼上も、両商標は『テンカ』の部分で一致する。そして、商品取引の実情を検討すると、前記のとおり原告は福井県に本店を有し平成3年2月2日に設立された資本金500万円の有限会社であって、創業90年となる来歴の主たる業務は肥料商であり、ウェブサイトによる『天下米』と『土橋商店』の検索結果も1万2800件程度であることからすると、全国的にみた一般需要者が『天下米』なる文字を見、あるいは『テンカマイ』なる称呼を聞いたときに、その販売業者としての『土橋商店』(原告)を直ちに想起するとまではいえないというべきである。以上によれば、本願商標と引用商標とは、外観は、その受ける印象が相当程度異なるものの、『天下』が共通であるから、一定程度の共通性が認められ、観念は、本願商標が『米』に関するものであるとしても、『この上なくすばらしい』『世に類がない』という意味を含む『天下』を共通にしているから、相当程度共通しており、称呼も『テンカマイ』と『テンカ』であって相当程度共通しているといえるから、前述した取引の実情を考慮すると、商標法4条1項11号にいう『類似する商標』であると認めるのが相当である。」として2つの商標は類似すると判断しました。

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