原告は、被告の第4906932号「YUJARON\ユジャロン\」(以下、「本件商標」とする。)に対して、不使用取消審判を請求しましたが、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決がなされました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。争点は、被告の各使用標章が、本件商標と社会通念上同一であるかどうかです。
知財高裁は、「本件商標は、アルファベット(欧文字)の大文字のみからなる『YUJARON』、片仮名からなる『ユジャロン』、ハングル文字からなる『』を概ね同じ大きさ、明朝体ないしこれと同等の書体で、横三段書きしてなる外観を有するものであり、上記アルファベット文字部分、片仮名部分、ハングル文字部分との間で格別の体裁の差は存しない。...我が国に居住する韓国・朝鮮系の者が少なくないことや、近年韓国等から朝鮮半島に由来する商品が多数輸入されて消費されたり、韓国で製作されたテレビ番組や映画が多数放映・上映されたりして、韓国等の文化や食品等の我が国における知名度が向上しているとはいえ、我が国の『茶』の消費者一般にとっては、未だ韓国語ないしハングル文字の理解力が一般人にまで十分であるとはいい難いのであって、需要者において、本件商標のハングル文字部分『』につき、併記されている『ユジャロン』の文字から、おそらくこのハングル文字も同じく称呼すると認識する可能性もあり得るものの、すべての者がこれを読んで正しく称呼したり、その意味内容を理解したりするには至らないものと理解される。なお、仮に本件商標が朝鮮半島に由来する飲料である『柚子茶』の容器等に付されて使用され、また我が国の消費者において『柚子茶』が朝鮮半島に由来する飲料であると知って被告らが販売する『柚子茶』を購入する消費者(需要者)があるとしても、そのような消費者であっても韓国語ないしハングル文字を全く解しない者も少なくないものと容易に推認できる。...『』がハングル文字であること自体は我が国の需要者の間でも一般的認識となっていると推測され、この部分を独立の図形として商標の構成を評価するのは相当でなく、この部分も、称呼は判然としないものの何らかの文字を表すものとして、本件商標からは、『YUJARON』と『ユジャロン』の部分を合わせて一体として『ユジャロン』との称呼が生じると解される一方、これは被告株式会社ビュウの代表者が創作した造語であるから(弁論の全趣旨)、そこからは特段の観念は生じない。商標として使用されたと認められる前記各使用標章からは、『ユジャロン』の称呼が生じることが明らかであるし、本件商標のアルファベット部分又は片仮名部分の一方又は双方と同一の文字列をその構成部分としているものであるから、前記各使用標章と本件商標とは社会通念上同一の商標であると評価することができる。なお、『』の部分については前記のとおり図形として評価するよりも文字として評価するのが相当であるから、前記各使用標章と本件商標の外観の相違は、上記評価を左右するものではない。」との判断を示し、審決に誤りはないとしました。