原告は、商標「CLUBHOUSE\クラブハウス」(以下「本件商標」とする。)の商標権者です。被告は、本件商標に対して不使用取消審判を請求しましたところ、特許庁は商標登録を取消す旨の審決を行いました。原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。争点は、原告のメールマガジンにおける「クラブハウス」標章の表示行為が商標法2条3項8号の使用にあたるかどうかです。
知財高裁は、「商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならない(最高裁昭和42年(行ツ)第32号同43年2月9日第二小法廷判決・民集22巻2号159頁)。...原告は、メールマガジン及びWeb版に『クラブハウス』なる標章を表示している。メールマガジン及びWeb版には、加工食料品を中心とした原告商品に直接関係し、原告商品を広告宣伝する情報が掲載されているから、メールマガジン及びWeb版は、顧客に原告商品を認知させ理解を深め、いわば、電子情報によるチラシとして、原告商品の宣伝媒体としての役割を果たしているものということができる。このように、メールマガジン及びWeb版が、原告商品を宣伝する目的で配信され、多数のリンクにより、直接加工食料品等の原告商品を詳しく紹介する原告ウェブサイトの商品カタログ等のページにおいて商品写真や説明を閲覧することができる仕組みになっていることに照らすと、メールマガジン及びWeb版は、原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報ということができ、そこに表示された『クラブハウス』標章は、原告の加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。...『クラブハウス』の表示はメールマガジンの名称としても使用されていることは否定することができない。しかしながら、商標法2条3項1号所定の使用とは異なり、同項8号所定の使用においては、指定商品に直接商標が付されていることは必要ではないところ、リンクを通じて原告のウェブページの商品カタログに飛び、加工食料品たる原告商品の広告を閲覧できること、そして、そのような広告はインターネットを利用した広告として一般的な形態の一つであると解されることからすると、原告のメールマガジン及びWeb版における『クラブハウス』の表示が、原告商品に関する広告に当たらないということはできない。また、被告は、原告のメールマガジン及びWeb版には、全体の商品には『ハウス食品』商標が表示され、個々の商品にはそれぞれ個々の商標が表示されているから、『クラブハウス』標章が表示されているとしても、商品についての使用に当たらないとも主張する。しかしながら、個々の商品に2つ以上の商標が付されることもあり得るところ、製造販売の主体である原告を表す『ハウス食品』商標が付されているからといって、原告商品を宣伝する目的で配信されるメールマガジン及びWeb版に原告を表す『クラブハウス』標章を付すことが、商標の使用に当たらないということはできない。...原告のメールマガジンに付された『クラブハウス』標章は、上下2段で表された本件商標の下段と同一であり、その結果、本件商標と同一の称呼及び観念を生ずるものということができる。よって、上記『クラブハウス』標章は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たる。...以上のとおり、原告は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、加工食料品を中心とする原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報であるメールマガジン及びWeb版に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、これを電磁的方法により提供したものである。原告の上記行為は、商標法2条3項8号に該当する。」として、本件審決の認定判断は誤りであるとして審決を取消しました。