原告は、「東京維新の会」の文字を標準文字で表してなる標章(以下、「本願商標」とする。)について第41類「技芸、スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催、教育研修のための施設の提供、電子出版物の提供、書籍の製作、放送番組の制作、教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定役務として、商標登録出願(以下「本願」という。)をしましたが商標法4条1項7号に該当するとして拒絶査定を受けました。原告は拒絶査定不服審判を請求しましたが、本願商標は商標法4条1項6号に該当するので「本件審判の請求は成り立たない。」との審決を受けました。原告は、商標法4条1項6号の登録阻却事由の有無の判断時期は査定時であること、査定時において東京維新の会は不存在であったことなどを主張して本件審決取消訴訟を提起しました。
判断時期について知財高裁は、「商標法4条1項6号については、同条3項により、出願時においても登録阻却事由が存在することが求められていないから、通常の場合は、査定時において登録阻却事由の存在が認められれば同号に該当するものと解される。しかし、拒絶査定に対する審判が請求された場合には、審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においてもその効力を有するものとされ(商標法56条、特許法158条)、審査と拒絶査定不服審判とは続審の関係にある。このように審判が続審の手続であることから、審査段階で提出されていなかった新たな資料も補充して、審査官の判断の当否が決定されることになる。その上、続審であることからすれば、審判において、査定時における処分の理由とは異なる理由により判断することも、拒絶理由通知等の手続的要件を履行する限りにおいて、可能であるというべきである。...手続の経緯からみれば、審査官は商標法4条1項7号の拒絶理由通知を発していたのに対し、審判体は同条1項6号という拒絶査定の理由とは異なる新たな拒絶の理由を発見し、新たな拒絶理由通知を発した上で、異なる拒絶の理由に基づいて審決をしたものである。そうすると、審査官においては商標法4条1項6号の拒絶理由の存否については全く判断をしておらず、審決において初めて同号の拒絶理由の存否について判断したものであるから、このような場合、審査官の拒絶査定において全く判断の対象とならなかった商標法4条1項6号の判断について、査定時を判断の基準時とする合理性はない。むしろ、同号について初めて特許庁としての判断が示された審判時をもって、判断の基準時とするのが合理的である。そうすると、審査と拒絶査定不服審判とは続審の関係にあり、本件のように審判において新たな拒絶理由通知が発せられ、審査とは異なる拒絶理由について判断されることもあることを考慮すると、拒絶査定不服審判の審決における商標法4条1項6号の判断の基準時は審決時となるというべきである。」として、本件において審決時を基準時とすべきであるとした審決に誤りはないとの判断をしました。
商標法4条1項6号該当性について知財高裁は、「日本維新の会が多数の国会議員を擁する全国政党であることは公知の事実であるが、東京維新の会は、日本維新の会の友好団体として協力関係を築いていた政党であると認められる。そして、東京維新の会は、地域政党であって、東京都議会議員を擁し、代表者であるDは日本維新の会の東京都支部長を務めており、政治団体として東京都選挙管理委員会へ届け出ており、その活動状況は新聞各紙においてたびたび報じられていたのであるから、東京維新の会は、少なくとも東京都においては著名性を有する団体であったと認められる。審決時である平成26年2月25日の時点において、東京維新の会は解散していたものと認められるが、その旨が東京都公報に掲載されたのは、審決後の平成26年3月17日のことであり、また、上記のような東京維新の会と日本維新の会との関係を考えるならば、『東京維新の会』の標章は、東京維新の会の解散後においても、当面は、その出所の混同を防止するために、同一又は類似の商標の登録を妨げるべき事由となるべきものである。以上によれば、『東京維新の会』の標章は、公益に関する団体であって営利を目的としないものであり、かつ著名性を有する政治団体である東京維新の会を表示するものと認められるから、本願商標が商標法4条1項6号に該当するものとした審決の判断に誤りはないものというべきである。」として原告の請求を棄却しました。