Tarzan事件 知財高裁平成24年6月27日判決

被告は、第7類「プラスチック加工機械器具」等を指定商品とする「Tarzan(標準文字)」(以下「本件商標」とする。)の商標権者です。原告は、本件商標に対して4条1項7号を理由として無効審判を請求しましたが、不成立審決となったため原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
知財高裁は、「(本件商標は)日本では広く知られていないものの、独特の造語になる『ターザン』は、具体的な人物像を持つ架空の人物の名称として、小説ないし映画、ドラマで米国を中心に世界的に一貫して描写されていて、『ターザン』の語からは、日本語においても他の言語においても他の観念を想起するものとは認められないことからすると、我が国で『ターザン』の語のみから成る本件商標登録を維持することは、たとえその指定商品の関係で『ターザン』の語に顧客吸引力がないとしても、国際信義に反するものというべきである。『ターザン(Tarzan)』の語は、米国の作家バローズの手になる小説シリーズ『ターザン・シリーズ』に登場する主人公の名前であり、本件商標登録査定時(平成22年7月6日)の時点において、日本におけるその著作権は存続していたし、派生的著作物にはなお著作権が存続し続けていたものである。バローズから『ターザン・シリーズ』のすべての書籍に関する権利を譲り受けた原告は、オフィシャル・ウェブサイトを通じ、ターザンに関する諸々の作品及びバローズの業績を伝承・解説するとともに、『ターザン・シリーズ』を含めたバローズに関する小説、パルプ雑誌、映画、ラジオ放送作品、テレビ放送作品、コミックスなどのあらゆる作品を収蔵したオンラインアーカイブを作成・提供するなど、『ターザン』の原作小説及びその派生作品の価値の保存・維持に努めるとともに、米国のみならず世界各国において『ターザン』に関する商標を登録して所有したり、ライセンス契約の締結・管理に関わることによって、その商業的な価値の維持管理にも努めてきた。このように一定の価値を有する標章やキャラクターを生み出した原作小説の著作権が存続し、かつその文化的・経済的価値の維持・管理に努力を払ってきた団体が存在する状況の中で、上記著作権管理団体等と関わりのない第三者が最先の商標出願を行った結果、特定の指定商品又は指定役務との関係で当該商標を独占的に利用できるようになり、上記著作権管理団体による利用を排除できる結果となることは、商標登録の更新が容易に認められており、その権利を半永久的に継続することも可能であることなども考慮すると、公正な取引秩序の維持の観点からみても相当とはいい難い。」として本件商標の4条1項7号該当性を認め、審決を取消しました。

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