原告は、被告の登録商標「DCC」に対して商標法4条1項10号及び15号違反を理由に無効審判を請求しました。
しかし、特許庁は原告の請求を棄却したので、原告はこれを不服として本件審決取消訴訟を提起しました。
東京高裁は、「コーヒーは、その原材料であるコーヒー豆を我が国で産出することができず、すべて輸入品に依存しており、その香りや味覚は品種により特徴があり、持味である芳香も荒挽きする際焙煎法により異なつてくるものであるが、いわゆる専業的な喫茶店のみならず食堂、レストラン、グリル一般でも営業用に供され、一般家庭でも日常手軽に消費される嗜好品であつて、全国的に流通し、地域的嗜好特性も格別認め難い商品であることが認められる。...かかる全国的に流通する日常使用の一般的商品について、商標法第四条第一項第一〇号が規定する『需要者の間に広く認識されている商標』といえるためには、それが未登録の商標でありながら、その使用事実にかんがみ、後に出願される商標を排除し、また、需要者における誤認混同のおそれがないものとして、保護を受けるものであること及び今日における商品流通の実態及び広告、宣伝媒体の現況などを考慮するとき、本件では、商標登録出願の時において、全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも一県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたつて、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するものと解すべきである。...原告の使用によつてDCCが、主として専業的な喫茶店をはじめとする当該継続的取引先の相当数の取扱業者の間で、原告の営業ないし原告取扱いのコーヒー等の商品を表示するものとして認識されていたことこそうかがわれるけれども、その主な販売地域である広島県下でも専業的な喫茶店等に対する取引占有率は高々三〇パーセント程度に過ぎず、成立に争いのない乙第五号証ないし第七号証によつて認められる右以外の一般的な食堂、グリル、レストラン等の存在をも考慮すると、DCCを原告の業務に係る商品を表示するものとして認識していた同種商品取扱業者の比率は更に下まわるものといわねばならず、隣接県である山口県、岡山県等におけるそれらの比率は遥かに広島県に及ばないものであるから、商標法第四条第一項第一〇号に規定するような需要者の間に原告の業務に係る商品を表示する商標として広く認識されていたものとまではいい難い。」として無効事由の存在を否定した審決に誤りはないと判断しました。