原告は、角ゴシツク体で「ミルクドーナツ」の片仮名文字を左横書きして成る商標を第30類「菓子、パン」を指定商品として出願しましたが、商標法3条1項3号で拒絶査定を受けました。原告は拒絶査定不服審判を請求しましたが、棄却審決となったため、本件訴訟が提起されました。
東京高等裁判所は、「本願商標は『ミルクドーナツ』の片仮名文字を角ゴシツク体で左横書きにしたものであるから、商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものということができる。」と判断しました。
しかしながら、原告は、ドーナツの製造を開始した当初から、本願商標を付して販売しており、昭和四七年度上半期までの売上合計額は二四億九二〇〇万円に達していました。また原告は、テレビCMを週に3日流す等広告も積極的に行っていたので、これらのことを総合的に勘案して東京高裁は、「当時市場には他に本願商標と同じ標章を使用した商品は存在しなかつた事情もあつて、以上述べたように、原告会社の製造するドーナツの業界における好評判と原告会社の多種多様な手段を用いた宣伝広告の結果、おそくとも本件審決がなされ昭和四七年三月頃までには、本願商標は特定の業者が製造するドーナツを示すものとして、東京都を中心に全国にわたつて取引者および一般需要者間に広く認識されるに至つた。」として使用による識別力(3条2項)を獲得したと判断しました。